口の渇き(ドライマウス)の症状・原因とは?
口の渇きは、一時的なものもあれば、慢性的に続くケースもあります。症状が進行すると、日常生活に支障をきたしたり、口腔内の健康に影響を与えることもあるため注意が必要です。唾液の分泌量が減少すると、口の中の不快感だけでなく、虫歯や口臭、感染症などさまざまなトラブルにつながることがあります。
本記事では、ドライマウスの基本と口の渇きの症状や原因について紹介します。

目次
1. 口の渇き(ドライマウス)とは?
ドライマウスとは、口腔内の唾液の分泌が減少し、口の中が乾燥する状態のことを指します。この症状は、一時的なものから慢性的なものまであり、痛みや違和感によって日常生活に影響を及ぼすことがあります。ドライマウスは加齢とともに増加する傾向にあるため、高齢者は特に注意が必要です。
唾液の役割
唾液は、口内の健康維持に重要な役割を果たし、消化の促進や口内の潤滑、細菌の抑制などの機能があります。分泌される唾液の多くは、口の中にある3つの大きな唾液腺から出ており、1日に分泌される量は約1リットルにもなります。唾液が十分に出ないと、虫歯や口内炎などのリスクが高まるため、お口が不快なほど乾いたり、ネバついたりすることがあれば医師に相談することをお勧めします。
2. ドライマウスの症状
ドライマウスの主な症状は、口腔内の乾燥です。唾液の分泌が不十分になることで、口の中が常に乾燥しているように感じ、水分を頻繁に補給する必要があります。特に朝起きたときや夜間に乾燥感が強まることが多く、不快感を伴うことが一般的です。また、口腔内の乾燥だけでなく、のどの渇きもドライマウスの典型的な症状のひとつです。
唾液の不足は味覚にも影響を与え、食べ物や飲み物の味が変化したり、甘味や塩味、酸味、苦味の感覚が鈍くなることがあります。これは唾液が味覚受容体の正常な働きをサポートする役割を担っているためです。さらに、潤滑不足が原因で口内炎や舌のヒリヒリ感が生じる場合もあり、これらは食事や会話をする際に不快感を伴うだけでなく、口腔内の健康状態をさらに悪化させる可能性があります。加えて、唾液が細菌を洗い流す役割を果たしているため、その分泌が減少すると口臭が発生しやすくなります。口腔内の乾燥による細菌の増殖が悪臭の原因となり、唾液分泌の不足が続くことで慢性的な口臭の問題を引き起こすことがあります。
3. ドライマウスの原因
ドライマウスの主な原因は生活習慣や加齢です。特に、過剰なストレスや緊張、喫煙、過剰なカフェイン摂取、口呼吸は乾燥を引き起こす要因になります。
ストレスを感じると自律神経の働きによって唾液が粘つき、水分量が減って分泌そのものも抑えられてしまいます。喫煙はニコチンの影響で唾液腺の働きが低下し、唾液の量が減少します。さらに、カフェインを過剰に摂取すると利尿作用によって体内の水分が失われやすくなり、唾液の分泌にも影響を与えます。口呼吸の習慣がある方は、口の中が乾燥しやすくなるため、口臭の原因にもつながります。
加齢による影響も大きく、年齢とともに歯やかみ合わせに問題が生じることで、しっかり噛むことが難しくなる傾向があります。噛む刺激によって唾液の分泌は促されますが、噛む力が衰えることで唾液の量も減ってしまいます。さらに、更年期には女性ホルモンの分泌が減少するため、唾液の分泌量も低下しやすくなります。こうした要因が重なり、年齢を重ねるほどドライマウスになるリスクは高まります。
4. ドライマウスの予防と対策
ドライマウスの予防には日常ケアが重要です。定期的な歯科検診と口腔ケア、適切なブラッシングとフロッシングが推奨されます。さらに、十分な水分補給も欠かせません。特に、運動後や乾燥した環境にいる場合は、こまめに水分を補給することが重要です。また、バランスの取れた食事を心がけ、ビタミンやミネラルを豊富に摂取することで唾液の分泌を促進します。一方、辛い食べ物や酸性の食べ物は控えるようにしましょう。
5. ドライマウスの合併症
ドライマウスは口腔内の健康にさまざまな悪影響を及ぼします。その一つが歯周病のリスクです。唾液には歯と歯茎を健康に保つ役割がありますが、分泌が不足するとその保護効果が低下し、歯周病にかかりやすくなります。また、唾液は虫歯を防ぐ働きも担っていますが、その量が減少することで歯の再石灰化が十分に行われず、虫歯のリスクが高まります。
さらに、唾液には口腔内の細菌の増殖を抑える作用があるため、分泌が不足すると口内感染症が発生しやすくなります。これにより、痛みや不快感だけでなく、さらに深刻な健康問題を引き起こす可能性もあります。
6. 口腔乾燥症と唾液分泌低下症
口腔乾燥症と唾液分泌低下症は、どちらも口の乾燥に関わる言葉ですが、それぞれ意味や診断基準が異なります。口腔乾燥症は、口が乾く、ネバつくといった自覚症状を指す言葉です。一方、唾液分泌低下症は、実際に唾液の分泌量が正常値よりも少なくなっている状態を指し、診断には唾液量の測定など客観的な検査結果が必要となります。つまり、口腔乾燥症は「症状」、唾液分泌低下症は「状態」と捉えると分かりやすくなります。
また、ドライマウスは口腔乾燥症と同じ意味で使われることが多く、日常的には口の乾きや不快感を表す総称として広く知られています。唾液分泌低下症により口腔乾燥症、つまりドライマウスを引き起こすケースも多く見られますが、ストレスや加齢、薬の副作用など、唾液量が極端に減少していなくても乾燥を感じる場合もあります。口の乾燥感が続く場合は、原因を特定し、適切なケアや治療を受けることが重要です。
7. ドライマウスだと感じたら
ドライマウスは、早めの対処により症状の軽減や悪化防止につながり、さらに合併症のリスクを抑えることも期待できます。そのため、定期的に口腔ケアを行い、必要に応じて専門医の診察を受けることが大切です。
日頃から鼻呼吸を意識することに加え、喫煙や過度な飲酒、カフェイン摂取を控えることも症状緩和に役立ちます。さらに、こまめな水分補給や、室内の乾燥を防ぐ対策も重要です。酸味のある食べ物や、しっかり噛んで食べる食品の摂取、昆布や納豆など唾液分泌を促す食品を意識的に取り入れることも効果的です。
口の乾燥は何科に相談するべき?
ドライマウスの症状が改善しない場合は、速やかに医師に相談することが大切です。口の乾きにはさまざまな原因が考えられるため、症状が気になる際は歯科や口腔外科を受診することをおすすめします。なお、口の渇き以外の不調がある場合には、内科や耳鼻咽喉科の受診も検討しましょう。