歯ぎしり・食いしばりの原因は?対策と改善方法
寝ている間に歯をギリギリと擦り合わせてしまう「歯ぎしり」は、自覚しにくいうえに歯や顎関節に大きな負担をかけています。さらに、近年は仕事中やスマートフォンの操作中に無意識で奥歯を強く噛みしめる人も増えています。
本記事では歯ぎしりの原因や種類、セルフチェック法について解説します。正しい知識を得て早めに対処すれば症状の進行を防ぎ、歯の寿命を大きく延ばすことができます。
1.歯ぎしりについて
医学的には、歯ぎしりのことを「ブラキシズム」と呼び、眠っているときや起きているときに、上下の歯を強く噛みしめたりこすり合わせたりする無意識の癖のことです。日本では大人の約1〜2割が歯ぎしりをしているとされており、歯ぎしりし続けると歯がすり減ったり、しみやすくなるなどのトラブルが起こりやすくなります。また、音がしないタイプの「食いしばり」も含めると、さらに多くの人が無自覚で症状を抱えている可能性があります。放っておくと詰め物が壊れたり、顎の関節に負担がかかって痛みを引き起こすこともあるため、早めの対処が大切です。世界保健機関ではこの歯ぎしりを「パラファンクション(余分な動き)」と分類しており、体にとって必要のない動きだと定義づけています。
2.歯ぎしりの種類
歯ぎしりは大きく三つのパターンに分けられます。歯を左右に擦り合わせる「グラインディング」はエナメル質を削り、歯の形を大きく変えてしまいます。上の歯と下の歯を強く噛み締める「クレンチング」は筋肉の疲労を生み、頭痛や肩こりの原因になります。短い間隔で上下の歯をカチカチと噛み合わせる「タッピング」は音こそ小さいものの、顎の関節に衝撃を繰り返し与えるため注意が必要です。どのタイプも、筋肉が緊張していることと睡眠の質が低いことが共通している原因です。人によって、睡眠時はグラインディング、日中はクレンチングというように、終始歯ぎしり・食いしばりを行うケースもあります。
3.ストレスだけじゃない?歯ぎしりの主な原因
歯ぎしりの原因として、心理的なストレスが挙げられますが、そのほかに噛み合わせのズレ、寝る姿勢の悪さ、アルコールやカフェインの過剰摂取、喫煙、睡眠時無呼吸症候群、さらには遺伝的素因まで原因はさまざまです。例えば、子どもの頃から花粉症や鼻づまりを放置した結果、口呼吸が習慣化していると、顎が本来の位置より後ろに下がってしまい、その影響で食いしばりが起こりやすくなることがあります。また、抗うつ薬など一部の薬の副作用で、筋肉が緊張状態となり歯ぎしりを引き起こす場合もあります。もし薬を飲み始めてから歯ぎしりの症状が出てきたと感じたら、自己判断せず、必ず医師に相談して薬の種類や量を調整してもらうことがおすすめです。
4.歯ぎしりがもたらす口腔内のトラブル
歯ぎしりが続くと、歯の表面がすり減ったりヒビが入ったりして、知覚過敏や虫歯になりやすくなります。歯そのものが短くなることで噛み合わせが変わってしまい、咀嚼がうまくできないというリスクも考えられます。また、歯ぐきや歯を支えている骨に強い力がかかり続けると、歯周病が悪化しやすくなり、歯を失う可能性が高まります。顎の関節に負担がかかり続けると、顎関節症を発症することもあります。さらに噛む筋肉が緊張し続けることで、頭痛や肩こり、首のだるさなど、体全体にも不調が広がってしまいます。このように、口腔内のトラブルだけでなく身体に関わる不調に繋がるため、早めの対策が大切です。
5.起きている間も?日中の歯ぎしりに注意
睡眠中だけでなく、パソコン作業やスマートフォン操作に集中しているときに、無意識に食いしばりが起こるケースが増えています。これを「覚醒時ブラキシズム」と呼び、寝ている間の歯ぎしりより自覚しやすいです。上唇と下唇を閉じても上下の歯は触れない状態が正常であるという「安静位」を意識し、歯が当たったらそっと離すトレーニングを習慣化すると、日中の食いしばりの改善に効果的です。また、座っているときに猫背になると顎が前に出やすくなり、その結果として無意識に歯を食いしばるクセが出やすくなります。そのため、椅子の高さなどを見直して、正しい姿勢を保つことが大切です。特にデスクワーク中の食いしばりは気づかないまま長時間続いてしまうのが特徴のため、意識的に口の力を抜く時間をつくるように意識することが重要です。
6.歯ぎしりのセルフチェック
朝起きたときに顎がこわばる、歯の先端が平らに削れている、頬の内側や舌の縁に圧がかかったような痕がある、家族から歯ぎしりの音を指摘された――このような経験がある場合、歯ぎしりのセルフチェックがおすすめです。
鏡で奥歯を観察し、エナメル質が黄味がかっていないか、詰め物の縁に隙間ができていないか確認します。就寝時、ボイスレコーダーやスマートフォンで録音したり、日中の食いしばりを感じたタイミングをメモする方法も、歯ぎしりの原因を突き止めることに効果的です。鏡の前で上下の歯をカチッと合わせた後にゆっくり離す練習を行い、歯が当たらない安静位を体に覚え込ませると予防に役立ちます。
7.歯ぎしりにお悩みなら歯科医院で治療を
歯科医院では、寝ている間に歯を守るためのマウスピース(ナイトガード)を作り、歯ぎしりによる歯へのダメージをやわらげることができます。もし、いびきや息苦しさがあるようなら、睡眠時無呼吸症候群の可能性もあるため、生活習慣の見直しが必要です。歯ぎしりを改善することで、歯のすり減りや口腔トラブルを防ぐことができます。また、睡眠の質も向上し、朝の目覚めがすっきりと感じられるようになる方も少なくありません。放っておくと気づかないうちに歯や体に負担をかけてしまうため、少しでも違和感があれば、早めに歯科医院にご相談ください。